映画「君の名は」の聖地を巡礼するのがブームだという。巡礼の言葉の意味が少し違う気もするが、そういう旅もまた新鮮な感動やあらたな発見があって楽しいに違いない。今日テレビを見ていたら、スペインの聖地として知られるサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指して世界中から集まってくる若者たちの巡礼の様子が紹介されていた。1カ月以上を一人で歩く巡礼の旅である。その中に日本から訪れひとりで巡礼する女子大生が登場し、巡礼の感想を尋ねられる場面が印象深かった。「一人で歩くという事は孤独だけれど太陽を背にして自分の前方にできる影と話しながら歩くことでいろいろな心の発見がある」と彼女は語っている。そう、ひとりで黙々と歩くということはまさに自分自身との対話の時間である。人生の殆んどを巡礼し続けた漂泊の俳人「種田山頭火」はひとり道を歩きながら多くの名句を読んだ。「まっすぐな道でさみしい」とか「分け入っても分け入っても青い山」など。都会に住み日々めまぐるしい生活を過ごしている多くの人たちは自分と対話する時間などなかなか見いだすことは出来ない。都会を離れ人里を離れた道をひとり黙々と歩く巡礼体験は、あらたな自分を発見できる貴重な体験になるに違いない。わざわざスペインまで出かけなくてもわが国には沢山の巡礼路がある。四国のお遍路が一番有名だが世界遺産にもなった熊野古道や東京近郊なら秩父の遍路路がある。興味本位の巡礼ではなく自分自身と対話しながら聖地を目指して一人で歩く巡礼体験をぜひ若い人たちにお勧めしたい。あらたな自分をきっと見いだせるに違いない。